2018年12月13日
2018年度上原記念生命科学財団
上原賞・各種助成金受賞者決定のお知らせ
公益財団法人上原記念生命科学財団(東京都豊島区、理事長:上原明/大正製薬ホールディングス株式会社代表取締役社長)は、12月13日(木)に開催した理事会において、2018年度上原賞・各種助成金贈呈対象者を決定しましたのでお知らせいたします。
今年度の上原賞は2名、各種助成件数は420件、助成金総額(上原賞副賞を含む)は15億円となりました。
上原賞 2名 副賞1件 3,000万円 ※掲載は五十音順
- 佐々木裕之氏 九州大学 生体防御医学研究所主幹教授
対象となった研究業績 : 「哺乳類のエピジェネティクス制御機構の解明」 - 高柳 広氏 東京大学 大学院医学系研究科教授
対象となった研究業績 : 「骨免疫学の創始による自己免疫疾患・骨関節疾患の研究」
各種助成金 420件 14億4,000万円
研究助成金(1件500万円)
100件 5億円
研究推進特別奨励金(1件400万円)
10件 4,000万円
研究奨励金(1件200万円)110件
2億2,000万円
海外留学助成金リサーチフェローシップ
79件 2億9,320万円
海外留学助成金ポストドクトラルフェローシップ
61件 2億5,410万円
その他
特定研究助成金 | 20件 7,000万円 |
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国際シンポジウム開催助成金 | 30件 2,850万円 |
来日研究生助成金 | 10件 3,420万円 |
公益財団法人上原記念生命科学財団は、1985年の設立以来、今年度で34年目となります。
2018年度までの生命科学に関する諸分野の研究に対する助成(上原賞含む)は約9,600件、約297億円になります。
上原記念生命科学財団のホームページはこちらをご覧ください。
上原賞受賞者 (五十音順)
受賞者氏名
佐々木 裕之(ササキ ヒロユキ)医学博士
所属機関および役職
九州大学生体防御医学研究所主幹教授
略歴
昭和 31年 9月 17日生
昭和 57年 3月 | 九州大学医学部医学科卒業 |
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昭和 58年 3月 | 九州大学医学部第一内科研修医終了 |
昭和 62年 3月 | 九州大学大学院医学系研究科博士課程修了 |
昭和 62年 5月 | 九州大学遺伝情報実験施設 助手 |
平成 2年 4月 | 英国AFRC動物生理学遺伝学研究所留学 |
平成 4年 10月 | 英国ケンブリッジ大学ウェルカム/CRC研究所留学 |
平成 5年 4月 | 九州大学遺伝情報実験施設病因遺伝子分野 助教授 |
平成 10年 12月 | 国立遺伝学研究所総合遺伝研究系人類遺伝研究部門 教授 |
平成 11年 4月 | 総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻 教授(併任) |
平成 22年 1月 | 九州大学生体防御医学研究所エピゲノム制御学分野 教授 |
平成 22年 6月 | 九州大学 主幹教授 |
平成 23年 4月 | 九州大学エピゲノムネットワーク研究センター センター長(~平成30年3月) |
平成 24年 4月 | 九州大学生体防御医学研究所 所長(~平成28年3月) |
平成 26年 10月 | 九州大学 副学長 |
平成 30年 4月 | 九州大学高等研究院 研究院長 |
受賞対象となった研究業績
「哺乳類のエピジェネティクス制御機構の解明」
クロマチン修飾に基づく遺伝子発現制御システムであるエピジェネティクスの重要性に早くから着目し、まず、生殖細胞におけるゲノム刷り込みの確立機構について明らかにした。H19遺伝子の制御領域のメチル化が前精原細胞で確立されること、Dnmt3aが刷り込みに必須なDNAメチル化酵素であることを発見し、精子・卵子における刷り込みの実態がDNAメチル化であることを証明した。その後、如何にして特定の配列がDNAメチル化されるのかという標的特異性の問題に取り組み、Rasgrf1遺伝子のメチル化に小分子RNAの一種であるpiRNAが関わることを見出し、また、小分子RNAの主要な標的がレトロトランスポゾンであり、生殖細胞ゲノムをレトロトランスポゾンの転移による突然変異から防御していることを示した。さらに、エピジェネティクス機構の異常に基づく数々の疾患の病因解明や治療法の開発を世界に先駆けて行った独創的かつ画期的な研究業績である。
受賞者氏名
高柳 広(タカヤナギ ヒロシ)博士(医学)
所属機関および役職
東京大学大学院医学系研究科教授
略歴
昭和 40年 10月 7日生
平成 2年 3月 | 東京大学医学部医学科卒業 |
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平成 2年 7月 | 東京大学医学部附属病院整形外科 医師 |
平成 3年 1月 | 東京都老人医療センター麻酔科 医師 |
平成 3年 7月 | 東芝病院整形外科 医師 |
平成 4年 7月 | 都立台東病院整形外科 医師 |
平成 6年 1月 | 都立豊島病院整形外科 医師 |
平成 7年 2月 | 東京都老人医療センター整形外科 医師 |
平成 8年 7月 | 東京大学医学部附属病院整形外科 医師 |
平成 9年 4月 | 東京大学大学院医学系研究科博士課程入学 |
平成 13年 3月 | 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了 |
平成 13年 4月 | 日本学術振興会 特別研究員PD |
平成 13年 6月 | 東京大学大学院医学系研究科免疫学 助手 |
平成 15年 10月 | 東京医科歯科大学大学院分子細胞機能学 特任教授 |
平成 17年 4月 | 東京医科歯科大学大学院分子情報伝達学 教授 |
平成 21年 10月 | 科学技術振興機構ERATO高柳オステオネットワークプロジェクト |
平成 24年 5月 | 東京大学大学院医学系研究科免疫学 教授 |
受賞対象となった研究業績
「骨免疫学の創始による自己免疫疾患・骨関節疾患の研究」
骨の代謝制御は破骨細胞と骨芽細胞のバランスにより維持されており、その分子機構の解明は生物学的・医学的に極めて重要である。関節リウマチの骨破壊機構の解明に、骨と免疫系との相互作用という独創的な観点で取り組み、破骨細胞分化因子RANKLの重要性を確立した。すなわち、IL-17を産生する病的T細胞が、RANKL誘導により骨を破壊することを明らかにした。また、破骨細胞運命決定因子として転写因子NFATc1を同定し、RANKLシグナルを統合するマスター遺伝子であることを突き止めた。このように、骨代謝学と免疫学が融合した骨免疫学を創始し、Sema3Aによる骨防御作用の発見、Fezf2による免疫寛容制御の発見などの成果をあげた。関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患や骨粗鬆症などの骨関節疾患の発症機構の解明や新たな治療法の開発に道を拓いた画期的な研究業績である。