2017年12月14日

2017年度上原記念生命科学財団
上原賞・各種助成金受賞者決定のお知らせ

公益財団法人上原記念生命科学財団(東京都豊島区、理事長:上原明/大正製薬ホールディングス株式会社代表取締役社長)は、12月14日(木)に開催した理事会において、2017年度上原賞・各種助成金贈呈対象者を決定しましたのでお知らせいたします。
今年度の上原賞は2名、各種助成件数は419件です。
2017年度は、財団の基本財産が拡充されたことにより、上原賞副賞が2,000万円から3,000万円に増額されたのをはじめ、各種助成金の件数も増加、助成金総額は15億2,280万円となりました。

上原賞 2名 副賞1件 3,000万円     ※掲載は五十音順

○松本邦弘氏 名古屋大学 大学院理学研究科名誉教授
対象となった研究業績 : 「動物の発生・分化を制御する情報伝達機構の解明」

○宮脇敦史氏 理化学研究所 脳科学総合研究センター副センター長
対象となった研究業績 : 「バイオイメージングの医学応用的開発研究」

各種助成金 419件 14億6,280万円

研究助成金 (1件500万円)

100件 5億円

研究推進特別奨励金 (1件400万円)

10件 4,000万円

研究奨励金 (1件200万円)

110件 2億2,000万円

海外留学助成金リサーチフェローシップ

87件 3億4,790万円

海外留学助成金ポストドクトラルフェローシップ

54件 2億2,320万円

その他

  • 特定研究助成金 20件 7,000万円
  • 国際シンポジウム開催助成金 28件 2,750万円
  • 来日研究生助成金 10件 3,420万円

公益財団法人上原記念生命科学財団は、1985年の設立以来、今年度で33年目となります。
2017年度までの生命科学に関する諸分野の研究に対する助成(上原賞含む)は約9,100件、約282億円になります。

上原記念生命科学財団のホームページはこちらをご覧ください。

上原賞受賞者 (五十音順)

受賞者氏名

松本 邦弘(マツモト クニヒロ)工学博士

所属機関および役職

名古屋大学大学院理学研究科名誉教授

略歴

昭和26年12月 8日生

昭和49年 3月大阪大学工学部醗酵工学科卒業

昭和51年 3月大阪大学大学院工学研究科修士課程修了

昭和52年12月鳥取大学工学部工業化学科 助手

昭和60年 3月米国DNAX分子生物研究所 主任研究員

平成 2年 6月名古屋大学理学部分子生物学科 教授

平成 8年 4月名古屋大学大学院理学研究科 教授

平成 29年 4月名古屋大学大学院理学研究科 名誉教授・シニアリサーチフェロー

受賞対象となった研究業績

動物の発生・分化を制御する情報伝達機構の解明
細胞の増殖・分化は、様々な情報伝達システムによって制御されており、その分子機構の解明は、生物学的・医学的に極めて重要である。酵母の情報伝達系を利用した哺乳動物遺伝子の単離という独創的手法を開発し、情報伝達経路を制御する新規遺伝子群の同定に成功した。その一つは、動物の発生・分化課程に重要な増殖因子であるTGFβによるシグナル伝達に必須のセリン・スレオニン蛋白質キナーゼであることを見出し、TAK1と命名した。続いて、TAK1に結合し、活性化を促す2個の蛋白質(TAB1, TAB2)を同定し、TGFβによるシグナルを増強させることを示した。そして、これら因子の生理作用を線虫やマウスを用いて解析し、動物の初期発生において細胞の運命の決定に関与していること、さらには、炎症やがん化などの生体反応に強く関わっていることを明らかにした。発生と分化を制御する情報伝達機構を解き明かした先駆的な研究業績である。

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受賞者氏名

宮脇 敦史(ミヤワキ アツシ)医学博士

所属機関および役職

理化学研究所脳科学総合研究センター副センター長

略歴

昭和36年12月28日生
昭和62年 3月 慶應義塾大学医学部卒業
平成 3年 3月 大阪大学大学院医学研究科博士課程修了
平成 3年 4月 日本学術振興会 特別研究員
平成 5年 4月 東京大学医科学研究所 助手
平成 7年10月 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校 博士研究員
平成11年 1月 理化学研究所脳科学総合研究センター細胞機能探索技術開発チーム チームリーダー
平成16年 1月 理化学研究所脳科学総合研究センター先端技術開発グループ グループディレクター
平成17年 7月 東京大学分子細胞生物学研究所細胞機能情報研究センター 客員教授(~平成22年3月)
平成18年 4月 自然科学研究機構基礎生物学研究所 客員教授(~平成23年3月)
平成18年10月 科学技術振興機構ERATO 研究総括(~平成24年3月)
平成19年 4月 早稲田大学理工学術院 客員教授
平成20年 4月 理化学研究所脳科学総合研究センター 副センター長
平成21年 4月 慶應義塾大学医学部 客員教授
平成24年 4月 横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 客員教授
平成25年 4月 理化学研究所光量子光学研究領域生命光学技術研究チーム チームリーダー

受賞対象となった研究業績

バイオイメージングの医学応用的開発研究
バイオイメージングの先駆者として、様々な蛍光タンパク質や指示薬などを開発し新しい可視化技術を提案するとともに、各々の蛍光特性の分子機構を解明するなど、基礎から応用をまたぐ幅広い生命科学研究領域で著しい貢献を果たした。蛍光カルシウム指示薬Cameleonに始まり、実用的に明るいGFP改変体Venus、蛍光色が不可逆的に変化するKaedeあるいは可逆的に変化するDronpa、細胞周期の進行をリアルタイムに可視化する蛍光指示薬Fucci、オートファジーを可視化するKeima、レチノイン酸の蛍光指示薬GEPRAなど、数々の可視化ツールの開発に成功した。さらに、固定生体組織を透明化するScale技術の開発によって大規模3次元再構築の先鞭をつけた。また、ビリルビンの結合で蛍光発光するUnaGを、ニホンウナギを材料に開発し、蛍光タンパク質の概念を拡張するとともに、ヘム代謝の可視化を元に医療応用研究を展開している。これらは医学応用研究に新しい潮流を吹き込む先駆的で独創的な研究業績である。