2021年12月20日

2021年度上原記念生命科学財団 上原賞・各種助成金受賞者決定のお知らせ

公益財団法人上原記念生命科学財団(東京都豊島区、理事長:上原明╱大正製薬ホールディングス株式会社代表取締役社長)は、1220日(月)に開催した理事会において、2021年度上原賞・各種助成金贈呈対象者を決定しましたのでお知らせいたします。

今年度の上原賞は2名、各種助成件数は379件、助成金総額(上原賞副賞を含む)は1475万円となりました。

上原賞 2名 副賞1件 3,000万円  

※掲載は五十音順

浦野 泰照 氏 東京大学大学院薬学系研究科╱大学院医学系研究科 教授

 対象となった研究業績

「有機小分子蛍光プローブの精密開発による、術中迅速微小がん蛍光イメージングの実現」

岡野 栄之 氏 慶應義塾大学 医学部 教授

 対象となった研究業績

「幹細胞システムを用いた中枢神経系の再生医学と疾患研究」

各種助成金 379件 13億4,075万円

  • 特定研究助成金

19

6,900万円

  • 研究助成金(1500万円)

95

47,500万円

  • 研究推進特別奨励金(1400万円)

10

4,000万円

  • 研究奨励金(1200万円)

110

22,000万円

  • 海外留学助成金リサーチフェローシップ

71

27,820万円

  • 海外留学助成金ポストドクトラルフェローシップ

50

2900万円

  • その他

 ・国際シンポジウム開催助成金

14

1,400万円

 ・来日研究生助成金

10

3,555万円

 

公益財団法人上原記念生命科学財団は、1985年の設立以来、今年度で37年目となります。
2021
年度までの生命科学に関する諸分野の研究に対する助成(上原賞含む)は約10,900件、約344億円になります。

上原記念生命科学財団のホームページはこちらをご覧下さい。

上原賞受賞者

氏名:浦野 泰照(ウラノ ヤステル)博士(薬学)

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所属機関および役職: 東京大学 大学院薬学系研究科╱大学院医学系研究科 教授

生年月日

1967年 64

略  歴

1990年 3

東京大学薬学部薬学科 卒業

1995年 3

東京大学大学院薬学系研究科 博士課程修了

1995年 4

日本学術振興会特別研究員(PD

1997年 5

東京大学大学院薬学系研究科 助手

2004年10

科学技術振興機構さきがけ「構造機能と計測分析」研究者(兼任)

2005年10

東京大学大学院薬学系研究科 助教授

2010年 1

東京大学大学院医学系研究科 生体情報学分野 教授(現職、兼務)

2014年 6

東京大学大学院薬学系研究科 薬品代謝化学教室 教授(現職)

受賞対象となった研究業績

「有機小分子蛍光プローブの精密開発による、術中迅速微小がん蛍光イメージングの実現」

化学蛍光プローブは、生物学研究に極めて有用なツールである。これまでの試行錯誤を繰り返す作製法に代わって、狙いの機能を持つ化学蛍光プローブの精密開発を可能とする、独自の光有機化学的発想に基づく論理的蛍光特性制御法の確立を目指した研究を積極的に展開し、分子内スピロ環化制御に基づく革新的な分子設計法の確立に成功した。これにより、自発的に明滅を繰り返す超解像蛍光イメージングプローブや生体内のグルタチオン濃度をリアルタイムで定量可能な新規蛍光プローブなど次々と作出し、その分子設計の巧妙さは化学系研究者に大きな驚きを、ライブイメージングの斬新性、革新性は生物学医学研究者に多大なインパクトを与え、世界中から称賛されている。がん部位が持つ特徴的な酵素活性を可視化する全く新たな蛍光プローブの開発は、内視鏡下で局所に噴霧するだけで微小がんであっても迅速に可視化できる世界初の画期的な医療技術の開発を可能にし、1,000種類を超える蛍光プローブライブラリーの構築は、がん患者由来臨床検体からの新規がんバイオマーカー酵素活性の同定を可能にした。基礎生物学と医療技術に大きな貢献をもたらす分野横断的、革新的な研究業績である。

 

 

氏名:岡野 栄之 (オカノ ヒデユキ)博士(医学)

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所属機関および役職:慶應義塾大学 医学部 教授

生年月日

1959年126日生

略  歴

1983年 3 月 

慶應義塾大学医学部卒業

1983年 4 月 

慶應義塾大学助手(医学部・生理学教室)

 

1985年 8

大阪大学助手(蛋白研究所)

1989年10月 

米国 Johns Hopkins大学医学部研究員

 

1992年 4

東京大学助手(医科学研究所)

 

1994年 9

筑波大学教授(基礎医学系)

1997年 4

大阪大学教授(医学部)

2001年 4 月 

慶應義塾大学教授(医学部・生理学教室)(~現在)

2007年10

慶應義塾大学大学院医学研究科委員長(~20153月)

2008年12

オーストラリア Queensland大学客員教授

2015年 4 月 

慶應義塾大学医学部長(~20179月)

2017年10

北京大学医学部客員教授

2017年10

慶應義塾大学大学院医学研究科委員長(~20209月)

2021年 6

Head of International Advisory Board, Stanford Laboratory for Drug/Device Development and Regulatory Science (SLDDDRS), Stanford University

受賞対象となった研究業績

「幹細胞システムを用いた中枢神経系の再生医学と疾患研究」

ヒト成体中枢神経系は、高度な機能を発揮するその一方、損傷に対して非常に脆弱であり、長年「再生しない臓器」の代表であった。岡野栄之博士は1990年代に、ショウジョウバエの神経発生に異常を示す変異体の中から、RNA結合蛋白質Musashiの変異体を同定し、同Musashi分子が転写後レベルの遺伝子発現調節により、幹細胞制御において重要な役割を果たすことを明らかとし、同分子がショウジョウバエからヒトに至るまで進化で保存されていることを発見した。1998年には、米国との国際共同研究により、Musashiを指標として用いて、ヒト成体脳に神経幹細胞が存在することを世界で初めて明らかにした。その2年後の2000年には、これらヒト成体脳神経幹細胞をFACSにより分離することに成功し、これら一連のパラダイムシフトにより、本来再生しないと考えられていたヒトの中枢神経系の再生を目指した「ヒト中枢神経系の再生医学」という新しい研究領域の構築に繋がった。その後20年に渡り、神経幹細胞やiPS細胞技術を用いた脊髄損傷の再生医療の開発、神経難病のALSの新薬開発研究とその医師主導治験(ROPALS試験)など一貫して、ヒト成体中枢神経系の再生医学領域における数々の顕著な成果を上げており、国際的な注目を浴びている。

 

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